波浪中を航行する小型船舶が波浪から外力を受ける範囲は、船首端から船尾端までの全体にわたるが、半滑走以上の状態では滑走面の後端から船首端までを波浪の影響を受ける長さと考えてよい。
同一の衝撃加速度について船体の曲げモーメントはRR11基準(案)の要求の方が大きくなるが、水圧については暫定基準の方が大きくなる。基礎となった実船解析ではRR11基準(案)と同じ方法によっている。
(2)衝撃加速度
暫定基準では平水に対し2g、限定沿海に対し3g、沿海に対し4gを採用している。
RR11基準(案)では限定沿海及び平水に対し2g、沿海に対し3gとし、その船の使用条件によって6gまでの外力を想定するように規定している。
加速度については両基準とも明記していないが、実艇解析では複振幅を使用している。
元来、小艇が応答する波は、その船に対応する波長の波であって、大洋の長大なうねりのような成分は無関係である。逆にその海域に吹いている風によって起こる波令の若い、波高・波長比の大きい波成分に大きな影響を受ける。
したがって、船舶安全法による平水は必ずしも小型船舶にとっては沿海、近海より安全な海域とは言えず、場合によっては沿岸の浅い海底の影響を受けた、波高・波長比の大きな波によって危険な海域である可能性がある。
元来はその船の使用上の限界条件によって船体強度は決定されるべきものであるが、そのような規定が現在の安全法関係法令の体系になじまないので、使用法からは最も軽い使用条件に対して衝撃加速度を定め、天候の急変に対しての緊急避難のためのマージンとして沿海等に対する加速度を増している(RR11基準(案)の考え方)。
RR11基準(案)では、その艇の用法によってはさらに大きな加速度に対して設計すべきことを規定し、その最大限を訓練された乗員の耐えられる限界6gであると規定している。
設計に当たっては航行区域に無関係に、その船の使用条件に相応した加速度に対して設計しなければならない。訓練された乗員が体力一杯に使用する船、例えばパトロールボート、高度のスポーツボート等は6gに対し、ある程度高速艇に慣れた特定の人員を運ぶ交通艇等は4gに対し、不特定の乗客を運ぶ旅客船等は2gに対して設計する。特に大型の艇では使用海域によっては、発生し得る波浪の大きさを考えて適宜加速度を減じて設計することができる。外海に出る船舶については、天候急変時に避難に要する時間を考慮して適宜マージンを持って加速度を設定する。
小型(排水量数トンまで)のスポーツ用ボートでは、時に30gといった大きな加速度を計測することがあるが、これは体感加速度としては数十トンないし百トン以上の船の6gと同程度である。これは衝撃持続時間(パルス幅)がきわめて短いためであり、構造部材に及ぼす影響も使用実績では体感加速度と同等として取扱えるもののようである。この問題は動的設計によらないと合理的に説明できないが、十分な資料が得られていない。
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